統計学

モーメント母関数の定義と使い方。モーメント母関数から期待値と分散を求めてみよう

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今回は、モーメント母関数について書いていきます。

モーメント母関数は、「積率母関数」とも言います。

ただ、「積率母関数」というと確率母関数と文字面が似ているのが難点。

 

微分積分のテクニックをたくさん使う論点ではありますが、統計学の地力をつけるためにもぜひマスターしておきたいところです。

photo credit:Nelson L.


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モーメント母関数(積率母関数)って何?

モーメント母関数とは、\(m\) 次のモーメント(後述)を生成するための関数です。\((m=1,2,3\cdots)\)

 

ある確率変数 \(X\) に対して、モーメント母関数 \(M_{X}(t)\) は以下の式で定義されます。

 

moment-gf

 

モーメント母関数は、\(e^{tX}\) の期待値として求められる \(t\) の関数です。

 

中学・高校の確率計算で出てくる期待値は「 \(X × P(X)\) 」の総和から求められましたが、モーメント母関数は「 \(e^{tX}×P(X)\) 」の総和から求められます。

 

\(X\) が従う確率分布によっては「モーメント母関数が存在しない」ケースもありますが、以下のように主要な確率分布の多くにはモーメント母関数が存在します。

 

moment-table

※ \(exp(x)=e^x\)

>二項分布

>ポアソン分布

>正規分布

どう使うの?

さて、モーメント母関数を求められると、なにが嬉しいか。

 

その答えは「モーメント母関数を \(t\) で \(m\) 回微分してから \(t=0\) を代入すると \(m\) 次のモーメントを求められる」ことにあります。

 

m-moment

 

上式のように、モーメント母関数 \(M_{X}(t)\) を \(t\) で \(m\) 回微分してから \(t=0\) を代入すると、\(E[X^m]\) が求められる事が分かります。

この、\(E[X^m]\) のことを \(X\) の原点まわりの \(m\) 次モーメントと言います。\((m=1,2,3\cdots)\)

 

つまり、\(M_{X}(t)\) を \(t\) で \(1\) 回微分してから \(t=0\) を代入すると「 \(X\) の \(1\) 次モーメント」

\(2\) 回微分してから \(t=0\) を代入すると「 \(X\) の \(2\) 次モーメント」が求まるわけです。

 

ここから

\(X\) の期待値は「 \(X\) の原点まわりの \(1\) 次モーメント」と等しく

\(X\) の分散は「 \(X\) の原点まわりの \(2\) 次モーメント」から「 \(X\) の原点まわりの \(1\) 次モーメント」の \(2\) 乗を引いた値に等しい

という性質を利用すると…

 

moment-ev

 

期待値と分散が求まります。

 

そう、つまりモーメント母関数さえ分かってしまえば、期待値や分散を求めることができるんです。

 

そのため、モーメント母関数は「期待値や分散を求める方法の1つ」としても重宝します。

 

モーメント母関数から期待値と分散を求めてみよう

それでは、具体的にモーメント母関数から期待値と分散を求めてみましょう。

 

まず、正規分布の期待値・分散を計算してみます。

seiki-mo

 

次に、指数分布。

exp-mo

 

見事、期待値と分散を求めることができました。

 

任意の次数のモーメントを求めたいときに特に重宝する関数です。