
「=(等号・イコール)」で結ばれた等式は、大きく分けて2種類あります。
1つは方程式。もう1つは恒等式です。
方程式とは変数 \(x\) が特定の値のときにだけ成立する等式のこと
恒等式とは変数 \(x\) がどんな値のときでも成立する等式のことを言います。

たとえば、 \(2x-4=0\) や \(x^2-7x+12=0\) などは方程式です。
これらは、変数が特定の値のときにだけ成立する等式だからです。
● \(2x-4=0\) は \(x=2\) のときだけ等号が成立し、\(x=0\) や \(x=1\) などでは成立しない。
● \(x^2-7x+12=0\) は \(x=3,4\) のときだけ等号が成立し、\(x=5\) などでは成立しない。
一方、\((x+1)^2=x^2+2x+1\) や \((x+2y)^2=x^2+4xy+4y^2\) などは恒等式です。
これらは、変数がどんな値のときでも成立する等式だからです。
● \((x+1)^2=x^2+2x+1\) は \(x\) がどんな値であっても成立する。
● \((x+2y)^2=x^2+4xy+4y^2\) は \(x,y\) がどんな組み合わせでも成立する。
今回は、恒等式を使った問題の解き方について解説していきます。
恒等式の性質とその証明
恒等式では定数 \(a,b,c,A,B,C\) に対して、以下のことが成り立ちます。

恒等式では、左辺と右辺で「\(x\) の次数 \((x^2,x,1)\) が同じ係数は等しい」という性質です。
例えば
\(ax^2+bx+c=0\) が \(x\) について恒等式なら \(a=0,b=0,c=0\) が成り立ち
\(ax^2+bx+c=x^2+3\) が \(x\) について恒等式なら \(a=1,b=0,c=3\) が成り立つ
といった具合ですね。
【証明】
\(ax^2+bx+c=Ax^2+Bx+C\) が \(x\) について恒等式であるなら
\(x=0,1,-1\) でも等号は成り立つことを意味する。
そこで \(x=0,1,-1\) を代入すると
\(x=0\) のとき \(c=C\) ・・・①
\(x=1\) のとき \(a+b+c=A+B+C\) ・・・②
\(x=-1\) のとき \(a-b+c=A-B+C\) ・・・③
①,②より \(a+b=A+B\) ・・・④
①,③より \(a-b=A-B\) ・・・⑤
④,⑤より \(a=A,b=B\)
よって、\(a=A,b=B,c=C\) が成り立つ。
恒等式を使った問題の解き方
さっそく、恒等式の性質を利用した問題を見ていきましょう。

このような問題には解き方が大きく分けて2つあります。
1つは係数比較法、もう1つは数値代入法です。
係数比較法
係数比較法とは、さきほど紹介した恒等式の性質「\(x\) の次数が同じ係数は等しい(\(a=A\),\(b=B\),\(c=C\)」を利用して、左辺と右辺の「\(x\) の次数が同じ係数どうし」を比較する手法です。

(1),(2),(3)の3つの連立方程式をうまく組み合わせて、\(a,b,c\) を求めます。
数値代入法
数値代入法とは、恒等式の性質「\(x\) にどんな数値を代入しても等号が成り立つ」を利用して、\(x\) に計算がカンタンになりそうな数値を代入する手法です。
数値代入法は、計算がカンタンになるというメリットがある一方で、十分性の確認を行う必要があるというデメリットがあります。

数値代入法から \(a=2,b=4,c=1\) を求めた時点では「\(x=0,-1,2\) のときに恒等式が成り立つ条件(必要条件)」を示せただけで、「すべての \(x\) について等号が成り立つこと」は示せていません。
そのため「\(a=2,b=4,c=1\) であれば \(x\) がどんな値でも等号がなりたつこと(十分条件)」を示す必要があるのです。

「元の数式に \(a=2,b=4,c=1\) を代入したら左辺と右辺が一致する」ことを示すことにより、十分性の確認をします。