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TOBとは何か?図表でわかる株価への影響とそのメリット・デメリット

 

TOBとは株式公開買い付け(Take Over Bid)の略語で、ある上場企業の株式を、買い取る「株数」・「価格」・「期間」を提示したうえで、金融商品取引所を通さずに不特定多数の株主から買い付けることを言います。

 

【TOBの4ポイント】

① ある上場企業の株式を

② 買い取る「株数」・「価格」・「期間」を提示して

③ 金融商品取引所を通さずに

④ 不特定多数の株主から買い付けること

 

株主は提示された「価格」を見たうえで、買い付けに応じるか選ぶことができます。

 

今回は、このTOBの目的やメリット・デメリットを見ていきましょう。

 


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なぜTOBを行うのか?

\(TOB\) の主な目的は、「経営支配権を手に入れること」にあります。

 

株式会社では、株式を買って「持ち株比率(正確には議決権の割合)」を増やせば増やすほど、以下のようにその会社の経営支配権を獲得していくことができます。

 

 「超」と「以上」の違いに注意。持株比率がちょうど \(1/3\) だと「残りの \(2/3\)」に強引に特別決議を通される可能性がある

 

しかし、これだけ大量の株式を買い占めようと思うと、市場でコツコツと買い集めるだけでは到底かないません。

 

そこで、買い取る「株数」・「価格」・「期間」を公示して、多くの株主に「売ってほしい」と呼びかけることで、短期間にその企業の株式を一気に買い集め、経営支配権の獲得を図る。

 

それが、\(TOB\) の目的です。

 

TOBする側のメリット・デメリット

\(TOB\) する側のメリットは、主に以下の3つです。

 

\(TOB\) を用いれば短期間に一定価格で買い集められますし、目標株数を集められない場合には \(TOB\) を取りやめることができるので、中途半端な株数を抱えてしまうリスクを回避できます。

 

 

一方、\(TOB\) を行うデメリットは「\(TOB\) の対象となる企業が反対している場合、対抗的な \(TOB\) が行われたり、買収防衛策を取られて損な取引をさせられるリスクがある」ことです。

 

 

たとえば、\(TOB\) されるまえに既存の株主に新株予約権を発行しておくポイズンピルという買収防衛策が有名。

 

ポイズンピルが行われていると、\(TOB\) のあとに既存の株主は市場価格よりも大幅に安い価格で大量の新株を購入できるので、\(TOB\) 実行者の持ち株比率が激減し、買収が失敗しやすくなります。

さらに、希薄化により1株あたりの価値が下がるので、\(TOB\) 実行者は大損することになります。

 

TOBを受ける株主のメリット・デメリット

\(TOB\) を受ける株主側のメリットは、その時点での市場価格よりも高い価格でその株を売却できることにあります。

 

\(TOB\) の目的は「株を大量に買い集めること」なので、株主に「その株を売りたい」と思ってもらえるように、買い取り価格を「その時点での市場価格にプレミアム価格を数割ほど上乗せした価格」にするのが一般的です。

 

そのため、\(TOB\) を受ける株主は大きなリターンを得ることができます。

 

 

\(TOB\) を受ける株主側のデメリットは、\(TOB\) が \(100\) %株式取得を目標としていた場合、たとえ株主が \(TOB\) に応じなくても最終的には法的な手続きを通じて強制的にその株式を買い取られてしまうことです。

 

Tooda Yuuto
Tooda Yuuto
その株を長期的に保有したいと考えていた株主からすると、大きなデメリットと言えます。

 

また、\(TOB\) の対象企業がさきほど述べた買収防衛策「ポイズンピル」の導入を発表すると、「1株あたりの価値の希薄化への懸念」や「買収防衛策にかかる膨大なコストによる財政面への不安」から、むしろ株価が下がってしまうリスクがあることも \(TOB\) のデメリットです。

敵対的買収の場合には、買収防衛策で株価が下がるリスクを警戒しておきましょう。

 

持っている株がTOBされたらどうすれば良い?

持っている株が \(TOB\) された場合、まずはそれが「全部買い付け」なのか「一部買い付け」なのかを確認してみてください。

 

以下のように、それぞれ条件が少しずつ変わってくるからです。

 

 

\(TOB\) の発表を受けてから、株主側が取れる行動は大きく分けて以下の \(3\) つです。

  1. \(TOB\) に申し込み、売却する
  2. \(TOB\) に応じず、市場で売る
  3. そのまま保有する(全部買い付けなら強制取得を待つ)

 

それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

 

全部買い付けの場合

「①\(TOB\) に申し込んで売る」と高い価格でほぼ確実に売れるのが大きなメリットです。

ただし、指定の証券会社に移管したり \(TOB\) に申し込む手続きが必要なのがデメリット。

 

それらが面倒という場合は、「②市場で売る」ほうが手軽です。

全部買い付けの場合は市場価格(株価)も \(TOB\) 価格に近い水準まで上がりやすいので、「②市場で売る」でも十分な利益をあげることができるでしょう。

 

一部買い付けの場合

「①\(TOB\) に申し込んで売る」と、応募が殺到すると買い取ってもらえない可能性があること

「②市場で売る」と、\(TOB\) 価格ほど高い価格では売れないこと

がそれぞれのデメリットになります。

 

一部買い付けのときは

「①\(TOB\) に申し込んで売る」はハイリスク・ハイリターン

「②市場で売る」はミドルリスク・ミドルリターン

 

いずれにしても、\(TOB\) が中止になると株価は \(TOB\) 前の価格まで落ちる可能性が高いので、欲張らずに市場で早めに売却するのが一番リスクが低いといえます。