数字にまつわる話

偏差値とは何か。図解でわかるその意味と使い道・求め方

 

偏差値とは、「そのグループの中でどのくらいの位置にいるか」を表す値です。

 

偏差値は主にテストの点数を評価するときに使われる値で

平均点をとった人の偏差値はちょうど50になります。

 

平均よりも高い点であるほど、その人の偏差値は55,60,65,70と高くなっていき

平均よりも低い点であるほど、その人の偏差値は45,40,35,30と低くなっていきます。

 

 

今回は、そんな偏差値の意味と使い方・求め方を見ていきましょう。

 


スポンサーリンク

「何点とったか」よりも「平均点との差」を考えよう

\(A\) さんは、英語のテストで \(50\) 点を取った。

\(B\) くんは、国語のテストで \(80\) 点を取った。

 

このとき、皆さんは \(A\) さんと \(B\) くんのどちらのほうが「成績が優秀」だと感じますか?

 

普通に考えると、\(80\) 点をとった \(B\) くんのほうが成績優秀に見えますよね。

 

しかし、ここで

「英語のテストは平均点が \(40\) 点の難しいテストだった」

「国語のテストは平均点が \(90\) 点の簡単なテストだった」

ということが分かったらどうでしょう?

 

 

\(A\) さんの英語の成績は、かなり優秀であると分かりますし

 

 

\(B\) くんの国語の成績は、あまり優秀とは言えないことが分かります。

 

このように、テストの成績の良さを判断するときは

「何点をとったか」よりも

「平均点と比べてどのくらい高い点・低い点をとったか」のほうが重要になってきます。

 

Tooda Yuuto
Tooda Yuuto
実際、成績を見るときは「平均点との差」を意識している方も多いはず。

 

成績の良さを見るときは「①平均点との差」が重要

 

「平均点との差」だけでなく「点数のばらつき」も考えよう

では、「平均点との差」だけを見ていれば良いのかというと、実はそうでもありません。

 

\(C\) くんは、平均点 \(60\) 点の数学のテストで \(70\) 点を取った。

\(D\) さんは、平均点 \(60\) 点の歴史のテストで \(70\) 点を取った。

 

どちらも同じ「平均点よりも \(10\) 点高い成績」なので、

「平均点との差」だけで考えると「同じくらい成績が良い」ように見えます。

 

しかし、ここで

「数学のテストはほとんどの人が \(65\) 点から \(55\) 点の間にいた」

「歴史のテストは \(90\) 点以上と \(40\) 点以下で二極化していた」

ということが分かったらどうでしょう?

 

 

数学のテストは点数のばらつきが小さいので

平均点より \(10\) 点も高い \(C\) くんの数学の成績はかなり優秀であると分かりますし

 

 

歴史のテストは点数のばらつきが大きいので

平均点より \(10\) 点高くても、 \(D\) さんの歴史の成績は優秀とまでは言えないことが分かります。

 

このように、テストの成績の良さを判断するときは

「平均点との差」だけでなく

「試験を受けたグループ全体の点数のばらつき」も考える必要があるわけです。

 

成績の良さを見るときは「①平均点との差」だけでなく「②点数のばらつき」も重要

 

偏差値をみれば解決

ここまでの話を聞いて

「①平均点との差と②点数のばらつきの両方を考えないといけないなんて大変…」

「毎回そこまで考えるのは難しい。もっと分かりやすい指標はないの?」

と思った方も多いのではないでしょうか。

 

そこで役に立つのが、偏差値です。

 

偏差値は、「①平均点との差」を「②点数のばらつきの大きさを表す標準偏差」で割ってから \(10\) 倍して、\(50\) を足すことで求まる値です。

 

標準偏差については「標準偏差とは何か?その求め方や公式の意味・使い方をわかりやすく説明します」の記事でくわしく解説しているので、参考にしてみてください。

 

偏差値は、「①平均点との差」を「②点数のばらつきの大きさ」で割ったことで、「①平均点との差」と「②点数のばらつき」の両方を同時に考えられる指標になっているのが特徴。

 

偏差値を見るだけで、「①平均点との差」と「②点数のばらつき」の両方を考慮した「成績の良さ」を知ることができるのです。

 

 

偏差値は基本的に \(20\) から \(80\) の間におさまることが分かっています。

理論上は偏差値 \(0\) 以下や偏差値 \(100\) 以上もありえますが、「他の \(100\) 人が \(20\) 点以下だったテストで1人だけ \(100\) 点を取った」くらい偏った結果でないとまず見かけない値です。

 

偏差値の求め方(参考)

ここでは、偏差値の求め方を具体例から見ていきましょう。

実際には偏差値は \(100\) 人以上のデータを元に計算したものでないと信頼できる値にならず、またその計算量は膨大になるので、個人で求めるのは難しいです。どのように求まっているのかの参考程度におさえておいてください。

 

ある日、\(A,B,C\) の \(3\) 人で英語と数学のテストを受けた。

点数は以下の通りだった。

「このグループの中での \(3\) 人の英語・数学の偏差値」を求めてください。

 

 

Step(1) 各教科の平均点を求める

はじめに、各教科の平均点を求めます。

 

平均点は、受験者全員の点数の合計を受験者数で割ることで求まります。

今回は、受験者数が \(3\) 人なので点数の合計を \(3\) で割りましょう。

 

 

英語の平均点が \(70\) 点、数学の平均点が \(56\) 点 と求まりました。

 

Step(2) 各教科の偏差を求めて、2乗する

平均点が求まったら、次は偏差を求めます。

偏差とは、各受験者の点数から平均点を引いた値のことです。

今回の場合は

英語の平均点が \(70\) 点なので、英語の点数から \(70\) を引くと英語の偏差

数学の平均点が \(56\) 点なので、数学の点数から \(56\) を引くと数学の偏差

が求まります。

 

 

偏差が求まったら、それらをすべて \(2\) 乗していきましょう。

 

 

Step(3) 偏差の2乗の合計を受験者数で割る

次は、偏差の \(2\) 乗の合計を受験者数(今回は \(3\) 人)で割って、各教科の分散を求めます。

 

 

英語の分散が \(24\)、数学の分散が \(38\) と求まりました。

 

Step(4) 標準偏差を求める

分散が求まったら、分散の正の平方根を計算すると、各教科の標準偏差が求まります。

 

 

今回の英語のテストの標準偏差は約 \(4.89\)

今回の数学のテストの標準偏差は約 \(6.16\) 

と求まりました。

 

Step(5) Z得点を求める

次に、自分の点数から平均点を引いた値を標準偏差で割ります。

この「平均との差」を「標準偏差」で割った値のことを、\(Z\) 得点と言います。

 

 

\(Z\) 得点は、「①平均との差」を「②点数のばらつき(標準偏差)」で割ったことにより、

「①平均との差」を「②点数のばらつき」の両方を考慮した「成績の良さ」を表す値になっています。

 

Step(6) 偏差値を求める

最後に、\(Z\) 得点を \(10\) 倍してから \(50\) を足すと、偏差値が求まります。

 

 

偏差値が求まったことで、点数だけでは分からなかった「成績の良さ」が分かりやすくなりました。

 

 

英語の \(64\) 点は偏差値 \(37.8\) なので「あまり良くない成績」であることが分かりますし

数学の \(64\) 点は偏差値 \(63.0\) なので、「かなり良い成績」であることが分かります。

 

偏差値を使うと、「得意・不得意の度合い」がひと目で分かりやすくなりますね。

 

偏差値と順位の対応関係

偏差値は、その集団の点数分布が正規分布に近ければ近いほど、利用価値が高くなります。

 

偏差値と順位の対応関係をまとめたのが、以下の表になります。

 

受験者 \(10,000\) 人のテストなら

偏差値 \(80\) の人は上位 \(0.13\) %なので、順位は \(13\) 番前後

偏差値 \(70\) の人は上位 \(2.28\) %なので、順位は \(228\) 番前後

偏差値 \(60\) の人は上位 \(15.87\) %なので、順位は \(1587\) 番前後

に相当することになります。

 

 

「偏差値 \(60\) 以上は、約 \(6\) 人に \(1\) 人」

「偏差値 \(70\) 以上は、約 \(44\) 人に \(1\) 人」

と考えると、偏差値 \(70\) 以上をとるのがいかに難しいかが分かりますね。