
「マルチタスクの能力があれば、もっと色んな仕事をサクサク片付けられるのに…」
「あの人はマルチタスクが出来る脳で羨ましい。自分もそうなるには何を鍛えればいいのだろう?」
次々と仕事が舞い込んでくる日々の中で、マルチタスクのスキルは欠かせません。
ぼくは、昔からマルチタスクがすごく苦手でした。
しかし、「ある才能を捨てる」事を意識するようになってから、マルチタスクへの苦手意識がドンドンと小さくなってきています。今回は、そんな話をしていこうかと。
photo credit: BeckyF
マルチタスクとは何か?その意味
マルチタスクとは、コンピュータ用語で「1つのコンピュータで複数の処理を同時に行う」こと。
転じて、ビジネスの場では「1人で複数の仕事を同時にこなすこと」という意味で使われています。
具体例としては、「料理を作りながら洗濯をする」・「海外支社と電話を通じて英語で打ち合わせをしながら、会議用の日本語資料を作る」などが挙げられます。
マルチタスクの問題点。無理をすると脳に損傷や悪影響も
複数の仕事を同時にこなせると「優秀なビジネスマンになった」と高揚感を感じられますが、実はマルチタスクには問題点があるんです。
それは、そもそも人間は本質的にはマルチタスクが苦手だということ。

スタンフォード大学のクリフォード・ナス教授ら研究者グループの実験によると、マルチタスクを頻繁に行う人の方が作業能率が低く、仕事を1つずつ片付けていくより生産性も低くなっていることが明らかになっています。
また、頻繁にマルチタスクを行うと「注意を払う力」や「情報を思い出す力」も低くなり、IQの低下や脳にダメージを与えてしまう可能性も示唆されているんです。これはヒドイ。
参考:マルチタスクは作業効率だけでなくIQも低下させる:実験結果|lifehacker
「慣れ」という例外
この話を聞くと「いやいや、主婦は料理しながら洗濯したりするけど、作業効率は明らかに良くなっているよ」と思う方もいると思います。
しかしそれは、いわゆる「慣れ」と呼ばれる現象で説明がつきます。
最近の脳科学の研究では、ある作業が習慣化すると、大脳の前頭葉が意識的に思考・処理していたことを小脳がコピーして無意識的に処理できるようになることが明らかになっています。
「歯を磨いたのは覚えているけど、どんな順番で磨いたかは覚えていない」・「家を出た後、カギを閉めたか不安になって戻ったが、無意識のうちに閉めていたようだった」というのも、これが原因と考えられます。
つまり、「慣れにより、小脳で無意識的に洗濯作業ができるようになったおかげで、大脳の前頭葉は料理のみに集中できるので、マルチタスクでも作業効率が下がらない」というわけ。
ある才能を捨てて、マルチタスクをシングルタスク化する
では、無意識的に処理するのが難しい仕事を複数ふられた場合にはどうすれば良いのか?
その答えは「未完想起の才能をすてて、マルチタスクをシングルタスクの連続に変換すること」にあります。

ツァイガルニック効果
人は「目標が達成されていない未完了の課題についての記憶は、完了した課題についての記憶に比べて思い出しやすい」という未完想起の才能を持っています。
これは一般にツァイガルニック効果と呼ばれ、テレビ番組の「続きはCMの後で!」やアニメの次回予告など、様々な場面で活用されている現象です。
※試しに、この記事のタイトルを「○○の才能」と未完了の文章にしたのも、そのため。
これは「終わっていない課題を忘れない」のに優れた才能ではありますが、先に述べた通り「人の脳は、1度に1つのことに集中するように作られている」ので、1つの課題が終わらない内から別の課題の存在が頭をよぎると、作業効率・生産性の低下につながってしまいます。
才能を捨てるコツ
①記憶に頼らない。些細なことでも、やるべきタスク・アイデアを全てメモに落とし込む
ある作業に取り掛かっている間に、他の作業の存在が頭をちらつくと、作業効率や生産性の低下につながります。
そこでまず、自分のタスクを全てメモに落とし込み、記憶領域をフリーにしてみてください。
自分の仕事はもちろん「〇時に部下の仕事の進捗度を確認する」と言った事も全てメモに落とし込み、メモさえ見れば自分のすべき事が全部分かる、という状態を作るんです。
「とりあえずメモに落とし込めば、いったん完了」と頭を整理することにより、ツァイガルニック効果が発揮されにくい環境を作り出すことができます。
メモはスマートフォンのアプリでも良いですが、出来れば手帳などアナログなものの方が良いです。

というのも、スマートフォンだと見るたびに他のアプリの通知が気になったり、「あのサイト見たいなぁ」といった雑念が湧いてきてしまうからです。
そのせいで、メモをみるたびに余計な情報が頭をよぎり、作業効率の低下を招く恐れがあります。
これはどれだけ意志が強かろうと関係ありません。雑念が頭をよぎった時点で作業効率は落ちてしまうので。
②一つのタスクをこなしている間は、他の事を考えない。
メモを終えたら、次にメモを読むまでは目の前のタスクに集中し、100%の力で素早くタスクをこなしていきましょう。
緊急性があるもの以外はメール・リマインダーの通知も切り、机の上も綺麗に片付けて、「視界には仕事に必要な情報以外に1つも文字が無い」環境を作ります。
そうして仕事をしていると、不思議と頭がスッキリしてくることに気が付くはずです。
人は、目の端でも色んな情報を処理していて、それが意外と重荷になっていたということでしょう。

③初めてやる仕事は、かかった時間を計測しておく
マルチタスクをメモに落とし込み、シングルタスクの連続にするうえで重要なのが「タスクを適切にメモに落とし込む」こと。
「目の前の仕事に集中しすぎて、別の仕事に取り掛からなければならない時間を過ぎてしまった…」なんて事はあってはなりません。
そのためには、各仕事に大体どのくらい時間がかかるのかを理解しておくことが不可欠です。
「この仕事は工程1を終えるのに○○分、全部終えるのに△△分かかるから、まず工程1だけ終えてから次のタスクに移ろう」といったように、メモにタスクを放り込むときに適切な判断ができるよう、初めてやる仕事はかならず所要時間を計測しておきましょう。
中途半端な才能を捨てて情報管理・効率を上げる仕事術
ここまで読んだ方の中には
「要するに、メモを使ってタスク管理しろって事でしょ?当たり前のことじゃないか」
と思われた方もいるかもしれません。
しかし、ここで大事なのは「未完想起の才能を利用するとむしろ能率が下がってしまうから、メモを使う」ということ。
「メモを使ってタスク管理する」ことは目的ではなく、「未完想起の才能を捨てる」ための手段に過ぎないんです。
目的と手段を混同して「メモを使ってタスクを管理」しつつも「未完想起の才能も利用」してしまっては本末転倒です。
常に目の前の1つのことに100%の力を発揮できるような環境づくりを心がけてみてください。
メモの力は意外とバカにできません。
効率の良くマルチタスクをこなす能力を鍛えるために、あえて「未完想起」の才能を捨てる。
ぜひ、試してみてください。