
「 \(3×0=0\) 」「 \((125+69)×0=0\) 」「 \(15984×28347×0=0\) 」
どんな値にかけても \(0\) になってしまう数。ゼロ。
無いことを表す「 \(0\) 」という値には、不可解かつ神秘的な魅力を感じさせられます。
この「 \(0\) の不可解さ」をよく表しているのが、「 \(0\) で割ってはいけない」というルール。
「なんで \(0\) で割ってはいけないの?」と先生に聞いても「そういうものだから」と言いくるめられ、モヤモヤした経験のある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「なぜ \(0\) で割ってはいけないのか?」を割り算の定義から考えていきます。
割り算の定義から考える
皆さんは、割り算の定義=「そもそも割り算とは何か?」と聞かれたら、どう答えますか?
「\(12\) 個のりんごを \(4\) 人で分けた時の、\(1\) 人当たりのりんごの数?」
いいえ、それは割り算の使い方であって定義ではないんです。

割り算は、代数的には以下のように考えることができます。今回はこれを利用しましょう。
実数などにおける定義から離れると、除法は乗法を持つ代数的構造について「乗法の逆元を掛けること」として一般化することができる。
参考:除法 – Wikipedia
これは、かみ砕いて言うと「割り算とは、逆数をかけることである」という意味です。

例えば
\(10÷5\) とは、\(10\) に「 \(5\) の逆数である \(0.2\) 」をかけること
\(12÷4\) とは、\(12\) に「 \(4\) の逆数である \(0.25\) 」をかけること
という意味になります。
※ \(B×b=1\) のとき、\(b\) を \(B\) の逆数と言う
「割り算」とは「逆数をかけること」である
ここから、\(0\) で割ってはいけない理由が見えてきます。
0で割るとはどういうことか?
「割り算」が「逆数をかける」ということは
「 \(0\) で割る」とは「 \(0\) の逆数をかける」という意味になります。
でも、\(0\) の逆数って何でしょう?
\(2\) の逆数は \(1/2\)
\(7\) の逆数は \(1/7\)
ということは、\(0\) の逆数は \(1/0\)?
そんな数、聞いたことがありませんよね。

事実、\(0\) に逆数は存在しません。\(0\) に何をかけても \(1\) にはなりませんから。
そして、存在しないものは定義しようがありません。
「 \(0\) の逆数をかける」という行為自体が存在しないので、「 \(0\) で割る」ことも定義できない。
だから、「 \(0\) で割ってはいけない」んです。

1=2の証明。存在してはいけない数
\(0\) には逆数が存在しないから、\(0\) で割ってはいけない。
なら、「 \(0\) には逆数がある」と無理やり定義してやればどうでしょう?
\(1/0\) という数の存在を認めれば、\(0\) で割ることもできるようになります。

が、しかし・・・

\(1/0\) という数の存在を認めたら、\(1=2\) というとんでもない等式が成立してしまいました。
まとめ
①割り算とは「逆数をかけること」である
②つまり「 \(0\) で割る」とは「 \(0\) の逆数をかける」ことを意味する
③しかし、\(0\) には逆数がないので「 \(0\) の逆数をかける」という行為自体が存在せず、\(0\) で割ることを定義できない。だから \(0\) で割ってはいけない
④裏を返せば、\(0\) に逆数が存在すると無理やり仮定すれば、\(0\) で割ることが可能になる。しかし、\(0\) に逆数が存在すると困ったことになる
\(0\)で割ってはいけない理由は \(0\) で割ることが定義されていないから。
そして、\(0\) で割ることを無理やり定義しようとすると \(1=2\) となり計算が役に立たなくなるので、「 \(0\) で割ることを定義しない」状態が維持されているわけです。