確率は収束するが運は収束しない【後編:運は皆平等ではない】

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「どんな人でも運の良い事もあれば悪い事もあり、長期的に見れば運は皆平等である」

という話、聞いたことありませんか?

この話、確率論的にみると微妙に正しくありません。

今回はその根拠として、前編で述べた「確率は収束する」を前提に
「実生活では確率はすぐには収束しない」「運は発散する」について述べていきます。

↓前編

【運ゲーとは何か?】確率は収束するが運は収束しない【前編:なぜ確率は収束するか】
サッカー・ビリヤード・トランプ・FPS・ルーレット・将棋・麻雀・格闘ゲームetc…

photo credit: JD Hancock 

収束する速度に注目しよう

前編で述べたとおり、確率は収束します。

サイコロなら、ある目の出る割合は1/6に収束し、出た目の平均は3.5に収束します。

ただ、ここで注意しておきたいのが「収束する」という言葉です。

「収束する」とは、数学の言葉で「ある値に限りなく近づいていく」という意味。

「ある値に近づいていく」に過ぎず、「ある値になる」わけではないんです。

「”限りなく近づいていく”と”ある値になる”って大差がないのでは…」と思いましたか?

では、次の文章を読んでみてください。

『100億に0.999を何回もかければ、やがて0に収束する』

勘の良い方だと、もう何が問題か分かったかと思います。

そう、「収束する」というのは「近づいていく」を「限りなく続ける」だけのコト

100億に0.001を数回かければすぐに0に近い値に収束してくれますが、
100億に0.999を何度かけても、1万を切るのですら相当先の話。

同じ「収束する」でも全然違うんです。

そのため、実生活で「収束する」を利用する場合には
「実際どのくらいの速度で近づいていくのか」が非常に重要な要素となってきます。

確率が収束する速度は意外と遅い

では、「確率が収束する」速度は実際どのくらいなのか。

これを調べるうえで役に立つのが標準偏差です。

標準偏差とは何か?その求め方や公式の意味・使い方をわかりやすく説明します
当ブログでも何度も出てきたことのある、統計学の必須知識「標準偏差(SD)」。 標準偏

標準偏差が半分になれば、確率分布上の「ブレの大きさ」も大体半分になります。

そして、確率の標準偏差は試行回数の正の平方根反比例することが分かっています。

つまり、試行回数を4倍にして初めて「ブレの大きさ」が大体0.5倍=半分になるわけです。

意外と遅いですよね。

実際に、ある運ゲーにおいて「実力的には勝率55%をとれるけど下位10%に相当する運の悪い人」の勝率をみていくと、以下のようになります。(※標本比率の下側累積確率を利用)

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試行回数を4倍にすると「実力とのブレ」が0.5倍(7%→3.5%)、50倍にすると「実力とのブレ」が約1/7倍(7%→0.92%)になっているのが分かりますね。

5000回試行した時点で1%弱の誤差まで収束しているということは、誤差を0.1%未満にするには約50万回、0.01%未満にするには約5000万回必要ということになります。

つまり、実生活において確率は「すぐに十分な収束をしてくれる訳ではない」のです。

運は発散する

ここで運ゲーの勝率を勝利数に変換すると、また違った見え方をするようになります。

(※二項分布の下側累積確率を利用)

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確率で見た時は収束していった「実力とのブレ」が、
こちらでは「試行回数が多くなるにつれて7→14→46と増えている」のが分かるでしょうか。

先ほどとは反対に、勝利数の標準偏差は試行回数の正の平方根に比例します。

参考:二項分布の標準偏差

そのため、試行回数を4倍にした時に「ブレの大きさ」が大体2倍になっているのです。

これは、「試行回数を増やしていけば確かに確率は収束するけれども、運が人生に与える影響量はむしろ発散する=増加していく傾向が出る」という事を意味しています。

例えば人生ゲームやすごろくでは、ターンが進めば進むほどトップとビリの差が大きくなっていきますよね?

同じルーレットやサイコロを使っているはずなのに。

序盤は抜いては抜かれを繰り返すくらい近い位置にいても、終盤にはもの凄い差になってしまうのは、運が発散しているからです。

(※発散:数学用語で、収束の対義語。どんどん大きくなっていき、極限では無限大になること)

後編のまとめ

①実生活で「収束する」を利用する場合には「実際どのくらいの速度で近づいていくのか」に注意が必要

②試行回数を4倍にすると、確率のブレは0.5倍になる(確率の収束)

③試行回数を4倍にすると、運の影響量は2倍になる(運の発散)

※試行回数を4倍にすると、実力の影響量は4倍になるので、運ゲーでも実力をつける意味は大いにあります。

運ゲーなどにおいて「試行回数を増やせば収束する」という人の中には、「良い事があれば、その後同じだけ悪い事もある=運が収束する」ことを信じている人も少なくありません。

しかし実際には、確率が収束しているだけで運はむしろ発散しています。

「どんな人でも運の良い事もあれば悪い事もある」という意味では平等ですが、
長期的に見ても「運の良い事がある回数」という意味では平等ではないんです。

運がないことを嘆くよりも、たった1度の幸運を確実にものにできるよう努力を心がけていきたいですね。

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